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日本の世界遺産 白神山地(19) 「ブナ林の息吹き」 .
ぶなの芽
いよいよ春の到来か、ぶなの芽も膨らみ、伸びだそうとしている
ブナの葉
芽だし後の新緑のブナの葉
小生、若い時分より山歩きが趣味で、深山を訪ね歩く時、特に山の様相に生命の息吹を感じるのは、ブナの大樹林である。
ブナは、大抵の落葉樹は、晩秋には丸裸になるというのに、新芽がでてくるまで葉っぱを落とさずに、ぎりぎりまで枯れた葉っぱをつけたままでいる。
そんな葉っぱの上に雪が積もり、鋭く尖った芽も、そのまま雪を被って春の展開を待つ。 この葉っぱが落ち始め、新芽が動く出すと本格的な春が到来を実感するのである。
新芽は大きく膨らんで、細いウブゲをまとった新しい葉が出始め、やがて薄緑色の葉はしだいに大きくなって全体を覆うようになる。
暖かい春の陽光が、深閑としたブナの森に降り注ぎ、次第に渓谷の凍てつきをやわらげてゆく。
林床に積もった雪は、春の到来とともに樹勢熱によって解かされ、根元部分の雪をいち早く払いのける。 やがて雪解けは、根回り穴から融雪水となって森全体へと広がってゆく。 それと同時に、ブナの芽は萌黄色に染まるブナの新緑の波となって、谷から峰に向かって、目にも心にも染みわたるほど美わしく広がってゆく。 又、谷の斜面には、雪解けを待ちかねたように美しい草花たちの競演のドラマが繰り広げられる。 まさに「山おおいにはしゃぐ」季節の到来である。
ブナ森の山草類
初春から盛春にかけて、ブナの芽が萌え出る直前は、樹間を通して林床に降り注ぐ光の量は、年間を通じて最大となり、林床には多種な山草類であるイワウチワ、キクザキイチゲ、カタクリ、ニリンソウなどが我先にと競い合うように咲き乱れる。
だが、ブナの木々が芽吹き、葉が繁り、新枝を延ばす時期になると、光が遮断され、はかなく消えてしまう山野草たちである。 これを「スプリングエフェメラル」と呼んでいる。 つまり、早春植物ともいい、直訳すると「春の儚いもの」、「春の短い命」という意味で、エフェメラルは、カゲロウのことで、はかなく短い命の意味がある。
因みに、これまで北限のブナ(北海道南部の黒松内といわれる)は、南部の温帯地域のブナよりも生長速度は2倍以上との研究もなされている。 相対的に、成長の速い北限地帯のブナは他地域のブナよりも樹齢が短くなり、全地域の平均的な樹齢が250年であるのに対し、北限地帯のブナは170年前後と推定されている。
更に、北限や上限といった分布限界域においては、樹木の成長は、その種の分布中心域と比較して衰えるのが一般的ですが、北限域のブナは限界域とは思えないほど樹勢がよいとされる。
又、ブナの葉は、北限域ほど大きいということが知られている。 融雪後の発芽時期には、ほかの樹種より早く葉を広げ、短い北国の夏に適応している。 単葉の面積は、白神山地のほぼ北限の葉は、九州辺りの南限域(鹿児島大隈半島)の葉より、約4倍の大きさになるおされている。
次回、 「ブナ林の植生域」
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